我が家は夫がみかん農家をしています。その加工部門を立ち上げたのは2017年のこと。
当初はベーグルを車で販売していました。主力商品は、天草の季節の野菜や果物を使ったベーグルです。夏ならズッキーニ、バジル、ミニトマトあたりの季節野菜を使います。
野菜をパンに使うこと、ベーグルという食べ物が天草に知られていなかったこともあって、何度か「これまでどこかで修行していたんですか?」「調理師の免許は持ってるんですか?」と聞かれたことがあります。
私は以前に仕事でベーグルを作ったことはありません。それまで就いていたのも食品製造とは関係のない仕事です。
じゃあ、パン作りがものすごく好きで、昔から休みの日にせっせとパン作りをしていたの?と思うかもしれませんが、決してそういうわけでもありません。
「まったくの素人ではじめちゃったわけ?」と思うかもしれません。
実務経験が有無で言えば、素人ということになりますね。
たしかに昔は店をはじめるというと、親の代から受け継ぐケースや、学校卒業後その道ひとすじでやってきたというケースが多かったかもしれません。
でも、いまはそうじゃないと思うんですよね。
未経験でも仕事にできる。
私がそう考える理由は3つあります。
ネットと本をフル活用すれば知識は得られる
まず1つ目。いまの時代、ネットや本を活用すれば情報はいくらでも手に入る環境にあるからです。私の場合、まず一番簡単そうなパンづくりの本を読んで、作り方を覚えました。最初はレシピ通りに作ってみる。何回か作っているうちに酵母を変えるとどうなるか?小麦粉や水の配合を変えるとどうなるか?といったことが気になりはじめます。
本のレシピを無視すると、やっぱり失敗します。
すると、なぜ失敗したのか?が気になるので、パンがふくらむ仕組み、発酵とは何か、酵母とは何かみたいなことを勉強しました。
本は物事を体系的に学ぶのに本当に適したツールで、何冊か読めば基本的なことはわかります。知識を得るだけなら、本だけでもいいかもしれません。
ただやっぱり、本だけではわからないこともあります。そんなときはYou Tube動画を見たり、プロを教える講師のレッスンを東京まで受けに行ったりしていました。
リアルのレッスンに行ってよかったと思うのは、講師に直接質問できたこと、どんな道具をどういう風に使っているかを見ることができたことです。
なぜそのオーブンを選んだのか?といったことも聞けたのは、本では得られない貴重な体験でした。
求められるレベルは目指すものによって違う
2つ目は、私の場合”最高のもの”を作ることではなく、及第点レベルを目指すことが仕事の目的だからです。専門の学校に通えばものすごい時間とお金がかかります。どこにゴールをおくかにもよりますが、最初から高いレベルを目指す必要はないと思うんですよね
専門サービスを利用するのは、自分に何が足りないかがわかってからでも遅くありません。むしろ足りない部分がわかってからの方が、効率よく時間とお金を使えるようになります。
たとえるなら、受験勉強や資格試験で考えてみればいいかもしれません。
受験や資格試験は日程が決まっています。限られた時間で合格点をとるにはどうするか。
まず、過去問を見ますよね?
私の場合、開業時期が先に決まっていたこともあって、商品を出すことが先にありました。
受験勉強や資格試験と違うのは、食べ物は及第点のレベルがわかりにくいことだと思います。
でも世の中にあるものを見てください。
うまーいっっ!って叫びたくなるものばかりでしょうか?
だからといって「何でもいい」わけではありません。
ただ、世の中には匠と言われるようなすごい人もいますが、そんな人は一握りだということです。
技術では到底かないません。きっと死ぬまでやってもかなわないと思います。じゃあどうするか。
スキル・技術より自分の強みを理解していることの方が大事
そこで3つ目です。それは、自分が持っている資源の中でその道ひとすじのプロとは違う魅力を考えることです。私の強みは、夫がみかん農家であり、天草の生産者から直接食材を手に入れられることだと思いました。
たとえば、同じ300円のものをつくる場合。街中のパン屋さんなら、すべての材料を外から調達することになります。そこに利益を載せるので、材料費の占める割合は低くなります。
でも、生産者が自分であるいは産地で作れば、輸送費や間の流通コストがかからない分、安く材料を仕入れられるので、材料費をかけられます。
うちのみかんはデコポンが主力商品ですが、普通にデコポンを手に入れようと思ったら、それだけで結構なコストがかかるはずです。
それに天草の生産者の多くがお年寄りです。天草のものをこだわって使うことは、お年寄りのやりがいや地域を元気にすることにもつながらないかな?と考えました。
それが私が加工をはじめた理由であり、強みでもあります。
広げてから狭めるのもアリ。人生100年時代は早くはじめた人が楽しめる
今回の話は、きっとどんなことにも通じます。 やったことがないことは仕事にできない。そう思っている人が多いです。だから、まずは何かの講座やスクールで何十万円、場合によっては数百万円かけて勉強しなきゃ!と考えるのかもしれません。
いまの時代、情報は至るところに落ちています。YouTubeもあるし、関連本を何冊か読めば、だいたいのことはわかります。
勉強も大事ですがそれより大事なのは早く、実際にやってみることです。
それ一本で生活していこうと思うとたくさん稼がなくちゃいけないので、極めることも必要です。先端技術が求められる分野は高い専門性がなくては話になりませんが、これから就こうとする仕事はそういう仕事ですか?
練習はほどほどにして、さっさと試合に出てみる。
たぶん負けます。でも勝てなくていいじゃないですか。そうすれば、自分のレベルや足りないものがわかります。すると、学ぶべきポイントがわかっているので効率よく吸収できます。
ひとつのことだけをやる。恥ずかしくないレベルになってからはじめる。でも、それだといつはじめられるかわかりません。
だから専業でなくてもいい。
複数の収入源があれば、ひとつひとつ大きく稼ぐ必要はないですよね。
ひとつひとつは及第点レベルでいいんです。そもそもやったことがないその業界の仕事を、本当に知ってる?本当に向いてる?と私は思ってしまいます。
実は専業という考え方それ自体が比較的新しい考え方です。
江戸時代までは一人でいくつものことをこなすのが当たり前でした。 分業制は、大量生産を前提とした工業的・近代的な考え方なんですよね。
一度広げてから狭めていくのもよいでしょう。
何かひとつのことを極めるのもひとつの考え方です。それも素敵ではありますが、人生100年時代。
これでやっていく!というものが決まったり、専業化する必要が出てきたりすれば、そこから狭めていけばいい。 50歳でもまだ50年あります。
いろいろあった方が楽しい。私はそう思います。ゆるく考えてみましょう。
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2017年に未経験からライターの活動をはじめた私が、都内のベンチャー企業の広報のお手伝いや、コンテンツ制作、ビジネス系メディアへの寄稿をさせていただけるようになるまでのこと、興味のあることなどを現在進行系でお伝えしています。
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