いじめに対する考え方は国によって違う、という話です。
去年、フィンランドの国語の教科書の日本語翻訳版を買いました。

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まずは教科書を買ったいきさつから。
私は大学時代は英語の先生を目指していました。なので人一倍、教育には関心を持っている方だと思います。
別の仕事を選んでしばらく教育への興味は薄れていたのですが、上の子が小学校に入学した年にコロナがはじまりました。
家で子どもの勉強を見るようになったので、いろいろ調べてみようという気持ちがわいてきたのがきっかけです。
なぜフィンランドなのか
OECD加盟国の学習到達度調査で、フィンランドは2年連続で好成績を収めました。
それを機にフィンランドの教育は世界から注目されることに。
何年か前には日本でもフィンランドブームが起こりました。
日本の教育と何が違うのだろう?
そんな好奇心から日本語翻訳版の教科書を買ってみたのです。
読解力”世界No.1”のフィンランドの教科書の特徴
小学校1〜2年生の教科書の特徴はこんな感じです。
- 物語調
- 登場人物がいる
- 事実の読み取り
- 背景・理由をたずねる
- 内容に対する自分の考えをきく
- これからどうなるかを想像させる
ぱっと見て感じたのは、その全体の構成の違いです。
日本の国語の教科書は物語や説明文などさまざまな単元が入り混じっていてそれぞれが独立していますが、フィンランドの教科書は、登場人物がいて物語調になっています。
日本の教科書、特に低学年のものは文字に慣れさせることを目的としているのか、中身は無味乾燥です。
一方、フィンランドの教科書は大人が読んでもおもしろい。続きが気になるような内容でした。
子どもを子ども扱いしていないと言えばいいかもしれません。
我が家では夜、寝る前に読書タイムを作っています。
読む本がなければそこで教科書を読んでいるのですが、子どもたちも楽しそうです。
「なぜ?」「どうして?」「どう思う?」と質問があるので、最初は少しめんどうくさそうにしていましたが、最近は様子が変わって来ました。
フィンランド教科書の目的は「考えさせること。」
「きちんと理由が言えれば、正解はない」というスタンスなので「なるほどねーじゃあこういうケースなら?」と話を振っているうちに、答えるのがおもしろくなってきたようです。
「今日も読もうよ」という流れができてきました。
グレーな現実社会で自分のスタンスを考えさせる
先日私がすごいなと思ったのは、いじめをテーマに扱った項でした。
コウモリがラジオのパーソナリティーをしていて、リスナーからの相談に応じるという設定です。
相談者のお悩みは「私は冗談がわからない」というものでした。
友達(?)がどんぐりをぶつけてきたり、大きな声でおどかしてきたりする。わたしはとてもいやだった。でも、友達は冗談だよ。と言う。
冗談がわからないわたしは、どうすればいいでしょうか?みたいな内容だったと思います。
それに対して、コウモリは「冗談ではないと思いますよ。それはいじめです」と言い切ります。
日本でもこういう「冗談だよ」と言いながら、からかうケースはあると思うんですよね。
それで怒ると「冗談が通じないヤツ」みたいに扱う。
大人の世界だって、よくあることだと思います。
パワハラとかモラハラなんて、その延長ですよね。
こういうとき、日本では多くの場合「いじめ」認定しないのではないでしょうか。
「感じ方は人それぞれ」「相手の気持ちを考えて」と言うくらいだと思います。
では、日本の教科書はどう教えているのでしょうか。
息子の道徳の教科書を見てみました。
書かれていたのは、転校してきた男の子がクラスで無視や陰口を言われるようになり、登校拒否になってしまったという話でした。
リアルといえばリアルですが、わかりやす過ぎます。
誰がどうみてもいじめ認定できる「黒」しか載せないので、いじめとは無視すること、陰口を言うこと。
それ以外のものはいじめではない、という話にもなってしまうのではないかと感じました。
実際のところ、いじめはわかりやすいものばかりではありません。
むしろ、現実世界ではグレーのものの方が多いはずです。
そのグレーのものをどう考え、どう対応するか。
大人でも難しい問題ですが、それをフィンランドでは小学校1〜2年いじめとは何かという哲学的な問題を、
サブではなくメイン教科の国語で子どもたちに考えさせているんですね。
私は教育は国づくりだと思っています。
教科書からその国がどういう国なのかが見えるような気がして、おもしろさ半分、不安も感じました。
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2017年に未経験からライターの活動をはじめた私が、都内のベンチャー企業の広報のお手伝いや、コンテンツ制作、ビジネス系メディアへの寄稿をさせていただけるようになるまでのこと、興味のあることなどを現在進行系でお伝えしています。
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