センスは知識からはじまる。センスがある人と、そうでない人はなにが違うのか

2021/10/10

仕事に効く

 


「センス」と「知識」

相反する2つの単語が並ぶタイトルに惹きつけられました。


センスは知識からはじまる』(水野学著)です。

著者は熊本県のご当地キャラクター・くまモンや、神奈川県の横浜と海老名を結ぶ相鉄線を運行する相鉄ホールディングスのブランディングを担当したクリエイター。

感覚的なものでとらえられることの多いアートの世界を、著者がどのように言語化するのかに興味がありました。

この本の中身を一言で表すと、「センスは知識からはじまる」
タイトルのとおりです!

よい商品やサービスをつくるには客観的な情報、つまり知識は必要なものですが、自分の感覚を無視する、というものとは違うようです。

著者のTwitterを引用してみました。


センスとは、数値化できない事象を最適化できる力のこと。

著者はセンスは誰もが手に入れることのできる能力だといいます。

「本当にそう?」そう思う人は、子どもを考えてみるとわかりやすいかもしれません。

小さな子どもが自分で、おしゃれな服を選べることはほとんどないですよね。

柄✕柄、ヘンテコな色合いのもの、好きな洋服を組み合わせただけの全身のバランスを無視したコーディネートなど、子どもを持ったことのある人なら、一度はその不思議なファッションの組み合わせをたしなめた経験があるはずです。

しかし、子どもは鏡に映る自分や周囲の反応を繰り返し目にするうちに、だんだんと「おしゃれなファッション」を体得していきます。


この例が示すように、センスは先天性よりも後天的な要素が強いものです。

ところが、この理論で考えると、誰もがセンスを自然と手に入れられるはずなのに、必ずしもそうなっていません。

なぜでしょう??

それが本書のキモとなる部分と言えます。


センスを磨くには、知識を蓄える作業と予測の繰り返しが必要です。


逆を言えば、知識の蓄積か予測のどちらか一方が不十分だとセンスを身につけるのは難しい、ということになります。


過去を知って知識を蓄えることと、未来を予測することは一見すると矛盾しているように見えるかもしれません。しかし、この2つは明確につながっています。なぜなら、知識に基づいて予測することがセンスだからです。

本書で印象的だったのは、「センスを磨く上で好き嫌いで見るのは大敵」というくだりでした。


たとえば、新商品の発売に向けて、いくつかの試作品を並べてどれにするかを決めるシーンを考えてみるとよいでしょう。

この場合に大切なのは「好き嫌い」で話しはじめてしまわないこと。

なぜなら、好き嫌いはその人の知識の範疇でしか話ができないからです。

著者は「趣味嗜好で話をしていては、結論が出ずに時間ばかりかかってしまう」と書いています。

「みんな違ってみんないい」という言葉があるように、本来はそれでよいはずです。感じ方は人それぞれなので。

しかし、他人となにかをするときにはそれだけでは不十分です。感じたことをきちんと言葉で表すことが必要になってきます。

この場合は「正しいかどうか」ではなく、なぜそう感じるかを自分以外の人にもわかるように、納得のいくように伝えられることが大事です。

「なんとなく」「好きだから」の中身を伝えるには、自分とは違う相手の背景を想像するための知識や経験が必要になっていきます。


これまでに得た知識や経験の中から、そのときの状況に合ったものを取り出せる力。

それがセンスの正体なのかもしれません。

知識を得たら、どうなるかを予想して、アウトプットしてみる。


そのプロセスは人それぞれです。そもそも、どのような知識を得るか、得てきたかは人によって違います。

そう考えれば、誰もが自分だけの「センス」を持っていると言えそうです。

****

この本を読んで、著者がセンスを幅広い概念でとらえていることに興味を持ちました。

もう少し著者について知りたいと思って調べてみるとインタビュー記事にこんな一文を見つけました。

問題を発見することや問題を解決することの1つの手段としてデザインを使う

機能と見た目が両立するデザインを作り出す著者にとって、センスは暮らしをよくするデザインを生み出すパーツの1つなのかもしれない。そんな気がしました。

『センスは知識からはじまる』は、耳で聞く読書。audiobook(オーディオブック)の聴き放題に収録されていました。読書が苦手、本を読む時間がない人におすすめですよ!

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