ここ数十年の間、私たちは 「便利」「簡単」「効率的」 ライフスタイルを求めてきました。しかし、便利で効率的なものを一番に考える生活は限界を迎えつつあるのかもしれません。なぜ私たちがそのように考えるのか、そして漁師と農家がコラボする理由をお伝えします。
「持続可能な農村」を目指す私たちの取り組み
高齢で農業を引退される方のみかん農園を引き継ぎ、畑が荒れ果てるのを防いでいます。
地域の一次産品を使った加工品を製造・販売することで、地域の魅力を域外に発信し、地域の方にやりがいを感じていただいています。
さらに、2019年からは、天草を訪れた方が天草の豊かな食を感じられる農家民宿を始めました。
私たちのしていることは、一見すると「地域活性」のための取り組みに見えるでしょう。
しかし、それは「誰かのための」キレイごとではありません。子育て世代の私たちにとって、地域の存続は「私たちのこと」だからです。
高齢率39%超「超高齢社会」天草のいま
天草はエリア全域の高齢化率が39%を超える、超高齢社会です。
私たちの住む集落には、我が家のほかに子どもがいる家はありません。
70歳以上のお年寄りがほとんどを占めています。 一昨年近所の小学校が閉校したこの地域の子どもたちは、スクールバスで10kmほど離れた学校に通うことになりました。
どんどん小さくなっていく地域をどのように存続させるかは、私たちにとって重要なテーマであり続けています。
一度縮んでしまった地域は、元には戻らないでしょう。
「だったら、人が集まる便利で、快適な街に行けばいい」という考え方もあります。
しかし、今回の新型コロナウイルスの流行をきかっけに、便利さや快適さを一番に考えるライフスタイルは、ひとたび何かが起こると続けるのが難しい、もろいものであることに気がついた人も多いのではないでしょうか。
たとえ不便で非効率でも、細く長く続けられるものを作り出していく必要がある。
私たちは、そのように「持続可能な農村」を考えます。
子どものために「続けられる漁」を目指す漁師

これまで、どちらかといえば外に対して目が向いていた私たちでしたが、実は身近なところで未来のために活動している人のことを知りました。
天草の大浦エリアで牡蠣養殖をしている、恵比須丸・原田奨(はらだ すすむ)さん(36)です。
スーパーで魚を選ぶとき、あなたはどんな基準で魚を選んでいますか?
天然と養殖のものがあったら、天然を選ぶという人は多いかもしれません。
「これからは、養殖の時代」と原田さんは言います。原田さんが漁師になったのは、20歳のときのことです。
16年の間に漁獲量は半減。以前と同じ量をとるには、倍の時間がかかるようになりました。時間がかかるだけでなく、魚のサイズも小さめに。そんなとき、原田さんを動かしたのは子どもの一言でした。
"父さん、ぼく、大人になったら漁師になるよ"
この言葉を聞いて、天然資源に頼る漁のスタイルから、養殖へとかじを切ることにしました。
"子どもが漁師になると言ってくれたのは嬉しかった。でも、今の漁のやり方を続けていたら、子どもたちは漁師になれないでしょう。もう少し大きくなったら、違う道を考えるかもしれない。ただ、やっぱり漁師になりたいとなったときに、漁師になれる選択肢は残してやりたい。天草を出るしかない、というのはさみしいですから。"
干満の差が激しい天草・有明海は牡蠣養殖に向いている

牡蠣といえば、東北や三陸のものが有名です。
「天草は牡蠣養殖ができる場所?」と思うのではないでしょうか。
実は、天草が面している有明海は牡蠣養殖に向いています。海苔の養殖で知られるように、有明海は干満の差が激しい海です。
干満の差があることで、海苔は風味を増していきます。さらに、いくつもの河川が注ぎ込んでいるため、有明海にはたくさんのプランクトンがいます。
その条件は、牡蠣の養殖にも最適でした。
牡蠣養殖をはじめて7年。 大ぶりでしっかりとした味わいの牡蠣が作れるようになりました。
子どもたちが漁師の道を選べるように、持続可能な漁を目指す原田さん。 同じ大浦という狭いエリアに、同じような思いを持つ原田さんを知って、一緒に何かできないかと考えたのが、岩牡蠣と柑橘のコラボです。
旬を迎えた岩カキ×天草の柑橘

旬を迎えた天草の海の岩牡蠣と、天草のみかん山の柑橘のセットです。
岩牡蠣は大ぶりで、肉厚。ブランド牡蠣に負けないミルキーな岩牡蠣に、天草の晩柑をしぼってお召し上がりください。
さっぱり、さわやかな晩柑が岩牡蠣の濃厚な味わいを引き立てます
晩柑は、農薬も肥料も使っていません。
「養殖をすれば、漁はまだできる」未来に続く漁のあり方を模索する原田さんの挑戦は続きます。
どんどん人が減っていく天草で、住む人を増やすのは難しいでしょう。
しかし、この地域に人が暮らす限り、地域の自然と暮らしを守っていくことは大切なことです。
海は海、山は山とそれぞれ別々のことをしてしても、里山・里海を守ることはできません。
「一度人が入った以上、山と海の仕事に関わる人が協力して、手入れをするのは大切なこと」と原田さんは言います。
海の資源を守るには、同時に山を守っていく必要もあるのです。 私たちの取り組みは、「持続可能な農村」への第一歩です。
原田さんの牡蠣はこちらでお求めいただけます。
未来の子どもたちに誇れる地域へ。